思想新聞6月15日号の勝共50周年記念インタビュー「外交評論家 加瀬英明氏に聞く」を掲載します。今の護憲派、左派勢力の主張は「共産主義思想」と同根であり、共産主義から日本を取り戻す勝共運動の意義を語って下さいました。
【インタビュー】日本を取り戻す勝共運動を高く評価する
外交評論家
加瀬 英明 氏
革命ではおびたしだい数の人が殺戮される。20世紀以降の革命は大量の血を流した。ロシア革命や中国の共産、文化大革命、ナチスドイツの犠牲者は1億人を超える。2度の世界大戦の戦死者を合わせても2千万人もいかない。この数字は、革命がいかに恐ろしいものであるかを証している。
その中で最も多くの人命を奪ったのが共産革命だ。だから国際勝共連合は、共産革命勢力と闘った大きな業績がある。
今でも中国、北朝鮮といった共産政権が暗黒社会を作っている。ただその後、世界では小さな国も含め共産主義革命が起きていない。もちろん勝共連合の働きだけではないが、「共産主義は絶対的な悪である」という運動を世界的に展開してきた貴連合の勇士たちの功績だと言える。
国内では、勝共連合が憲法改正、スパイ防止法、拉致問題などに対し世論を喚起し、闘ってこられた。私はこれも高く評価している。久保木修己・初代会長には何度かお目にかかり、知性豊かでユーモアのある人だった。温和な人柄で包容力があり、いつも楽しく有益な時間を過ごしたのを覚えている。
日本国憲法の犠牲者
安倍政権が拉致問題を解決できないことに対し非難する声がある。もちろん、最大の責任は北朝鮮にある。だがそれと同等の責任が、日本国憲法にあると言える。
日本が仮に、サンフランシスコ講和条約で独立を回復後、占領軍が強要した憲法を改正し、せめて英仏並みの軍事力を持っていたらどうなったか。北朝鮮のような小国に侮られ、自国民が国内で拉致されるなどありえなかった。拉致被害者は日本国憲法の犠牲者だということだ。このままでは日本の全国民が日本国憲法の犠牲者になってしまうのではないか。
英仏の経済規模は各々日本の半分だが共に航空母艦や、核ミサイル搭載の原子力潜水艦を保有する。専守防衛という馬鹿げた戦略は採らないが、両国が平和愛好国であることを疑う者はいない。
戦後日本では左翼が言葉の言い替えをしてきた。例えば「無抵抗」が「平和」だ。だから平和憲法は無抵抗憲法だ。暴漢が殴りかかってきても一切抵抗できない。
専守防衛は本土決戦のことだ。敵が我が国に上陸する、あるいは敵のミサイルや航空機が日本に侵入しない限り迎え撃つことができない。これは昭和20年に狂信的な陸軍軍人らが本土決戦を叫び、一億総玉砕と言ったのと変わらない。だから立憲民主党をはじめとする護憲派の人たちは、本土決戦を日本が行わなかったことを悔いているのではないかと思う。
今年は明治維新から150年。ペルリという暴漢が江戸湾に乱入し日本を脅すと、夷狄を打ち払えと攘夷派が唱えた。日本は開国したが、もし攘夷派の主張が通れば本土決戦となった。本土決戦は懲りたはずなのに、護憲派がそうしたいというのは理解できない。
共産主義は思想として既に破綻した。だが護憲派は共産主義者と同じ主張で日本を滅亡させようとしている。「共産主義=悪」であることはもはや周知の事実だが、護憲派の主張は一般国民には解り辛く、戦いにくい相手だ。
彼らの勢力は次第に減ってきたが、それでも憲法改正の国民投票は大変な冒険になる。昨年の総選挙では比例区東京ブロックで自民党が180万票、立憲民主党が140万票。日本国憲法はこれまで1度も国民に直接承認されたことがない。もし国民投票で負ければ、この憲法が国民に承認されたことになり、今後の改正が難しくなる。
減退する左派勢力
防衛費が今年ようやく5兆円を超えた。日本の本当の脅威は北朝鮮ではなく中国。仮に北朝鮮が日本にミサイルを撃ち込めば、日本もかなり被害を受けよう。だが米国が必ず日本を守る。北朝鮮は小国だから。だが中国が日本を侵略した場合、米国が日本を本当に守ってくれるか。日本は米国の助けなしに国を守ることができない、この点を理解すべきだ。
今、北朝鮮だけでなく中国の脅威が迫っているのに、日本はまだ防衛費をGDP(国内総生産)の1%以下に抑えている。これはどう考えても論理的におかしい。だが防衛費の増額は票にならない。だから遅々として進んでいない。
経済産業省の統計によると化粧品の売り上げが2兆円超。サプリもそうでパチンコは3兆円。自衛隊の陸海空の各予算より化粧品、サプリ、パチンコの売り上げの方が大きい。日本では右も左も米国への依存心が強すぎるのが問題だ。
トランプ米政権が日本の防衛費をGDP比2%にせよと要求したが、米国の要請がないと日本が動かないのもおかしい。150年前の明治維新の時には、誰にも頼らずに自分で自らの国を守った。その気概が失われた。
昨年の米大統領選挙でトランプが勝ったのは、都市の似非インテリに対する地方の反乱だった。似非インテリとは、ヒラリー・クリントン、NYタイムズ、ハーバード大学などに代表される人々だ。日本でも同じことが起こりつつある。朝日新聞が急速に部数を落としているのもそれだ。日本で似非インテリが力を失ってきている。これも皆さんの運動のおかげだ。
戦後日本の一番大きな欠点は、保守が国の独立を忘れたことだ。ただ「いい生活したい」と、経済大国を築くことに専念し、危機に直面しても対応できない。スパイ防止法一つもまだ制定できない。企業でも国家でも秘密があるのは当然だ。仮想通貨の規制もそう。400億円の不正流出でようやく規制を検討するという。日本が欲望ボケしているからだ。
トンネルの出口の光
日本人と韓国人は隣同士で似ている点がある。韓国では、日帝時代が悪かったからまだ自立できないと言う。日本も、東京裁判やウォーギルト・インフォメーション・プログラムなど、米国の占領政策が悪かったから未だに自立できないとの議論がある。今年は戦後73年。日本の韓国統治は36年間で、その2倍の時間が流れている。
「日米韓の連携」と言っても結局、日本も韓国も米国にすがっていたい。そこで一所懸命運動しても、なかなか日本が立ち直らない。だが状況はかなりよくなっている。例えば今年は明治維新150年で、国民が祝おうという気分になっている。50年前の100周年の時は、国民の間にそんな雰囲気はなく70、年安保危機などと騒いでいた。今は我々の努力が実り、トンネルの出口の光が見えてきた状態だと思う。今後一層、共に頑張ろう。
(談・『世界思想』より)
思想新聞掲載のニュースは本紙にて ーー
6月15日号 巻頭特集「高まる中台軍事衝突の可能性」 / NEWS「勝共UNITE街頭演説会」 / 主張「『民間防衛』の在り方を問い直せ」 etc